黒翼(ブラックウィング)
馬鹿な奴だと思いながらゆっくりと手をポケットから出して相手の隙を見て、作った拳を頬へと入れた。
たかが女の力だからと言っても暴力を振るわれるのは痛いもの。スキンヘッドの男は拳を入れられ、ふらつきながら悠のもとから少し離れていく。
2,3歩離れた後、男は笑って悠の方を見て言う。
「こんなもんで"最恐"なんて笑わせてくれるな!!」
これなら勝てるなんていう余裕の笑みを見せる男に嘉耶が呆れてため息をついた。
「悠。手加減しろとは言ったがし過ぎだろ。遊ぶのは止めておけ。自分が勝てるなんて期待させると、後が面倒だろうが」
悠は後ろを振り向き、目だけで嘉耶に煩いと言っている。嘉耶は「はいはい」と返し、悠は前を向いて男と向き合い目を向けた。
「かかってこいよ。どうせ、口だけだろ!」
「黙れ」
低く言い放った悠は男へと近づき、思いっきり鳩尾を殴ると「カハッ」と息が出来ずに咳き込み倒れ込む。そんな男に追い打ちをかけるように、見下しながらつま先で抑えている腹を思いっきり蹴ると、男は気を失ってしまった。
「お前、鬼だな」
「手加減はしたから大丈夫だ。死にやしないしどこも折れてない」
「死なせたら俺達捕まるだろ」
まるで何もなかったかのように話を進めている3人に、意識のある倒れていた男達は驚きと恐怖しか感じなかった。
嘉耶は視線を感じ倒れていた男達と目を合わすと、それに続き悠と諒圭も目をそちらに向けた。男達は悠と目を逸らす。