跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
「結婚後にうちへ遊びに来てくれたときも、ふたりともべったりしてて本当に仲睦ましげだったものね。あの千秋が女の子と手をつなぐなんて、思わず二度見しちゃったわ」

私たちの振舞がどう見えていたのか、他者にそれを指摘されるのは気恥ずかしい。
口では意地悪を言いながら、足元が悪いときは千秋さんの方から手を取って支えてくれたり、ちょっとした荷物も代わりに持ってくれたりと、彼はなにかと私を気遣ってくれる。
最近はふたりで出かける機会もめっきりなくなり、同じようにされるかどうかはわからないが。

「うちの孫はてっきり冷め切った男かと思ってたけど、愛佳ちゃんといるときの様子を見てほっとしたわ。案外かわいいところもあるのね」

彼をかわいいと捉えるのはおそらく菊乃さんだけじゃないかと、心の内でつぶやく。

「あらいけない。長居しちゃってごめんなさいね。そろそろ約束の時間だわ」

この後なにか予定があるようで、時計を見た菊乃さんは出されたお茶をひと口飲んで立ち上がった。人付き合いの広い彼女は、相変わらずいつも忙しくしているようだ。

「愛佳ちゃん、千秋とまた遊びに来てね。岸本さん、邪魔しちゃってごめんなさいね」

まだまだ話し足りないと名残惜しそうにしながら、菊乃さんが部屋を後にした。

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