跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
理詰めで諭されれば、加藤製陶には他社からの支援が必要不可欠だともう認めざるを得ない。それでも私は、千秋さんと違って会社の事情と自分の結婚を同じ次元で考えられない。いや、考えたくないのかもしれない。
「そんなものはやれる人間がやればいい。業者に依頼してもいいしな」
お金のある人の発想で、逃げ道は即座に塞がれた。
「も、もし……」
「往生際が悪いぞ。俺の経験上、チャンスは機を逃したら二度と巡ってこない。この話を断っても、加藤製陶の再建はうちのばあさんがやってくれるだろう。だがな、俺の提案したタイルの受注はもちろん他社を検討する。なにも候補は加藤だけじゃない。親戚でもない相手を優遇する理由はないからな。それなりに需要の見込める話を蹴るのか蹴らないのか、どっちだ?」
まるで脅されているようだが、千秋さんが突きつけたのはまぎれもない現実だ。それに対して、私に即答するだけの勇気がないだけ。
決定権を握っているはずの千秋さんは、『どっちだ?』と最後の決断を私に委ねた。絶対的に強い立場にある彼がそうする理由は不明だが、ここで私がこの話を承諾すれば、加藤製陶が守られることだけはわかってはいる。
たとえば、菊乃さんの手を借りて今をなんとか乗り越えたとしても、新しい道を常に模索していかなければまた同じ繰り返しになってしまうだろう。時流に乗れず再び業績が低迷したとき、こんな好条件で手を差し伸べてくれる人が現れる保証はない。
その点、千秋さんはタイルの製造という新たな道を示してくれた。それを生かしきれるかは未知数だが、少なくとも無策の状態ではない。加藤の努力次第では、千秋さんの言った通り再建だって可能になってくる。
つまり、父の意見だなんて言ったところで、行き着く先は変わらないのだ。
「そんなものはやれる人間がやればいい。業者に依頼してもいいしな」
お金のある人の発想で、逃げ道は即座に塞がれた。
「も、もし……」
「往生際が悪いぞ。俺の経験上、チャンスは機を逃したら二度と巡ってこない。この話を断っても、加藤製陶の再建はうちのばあさんがやってくれるだろう。だがな、俺の提案したタイルの受注はもちろん他社を検討する。なにも候補は加藤だけじゃない。親戚でもない相手を優遇する理由はないからな。それなりに需要の見込める話を蹴るのか蹴らないのか、どっちだ?」
まるで脅されているようだが、千秋さんが突きつけたのはまぎれもない現実だ。それに対して、私に即答するだけの勇気がないだけ。
決定権を握っているはずの千秋さんは、『どっちだ?』と最後の決断を私に委ねた。絶対的に強い立場にある彼がそうする理由は不明だが、ここで私がこの話を承諾すれば、加藤製陶が守られることだけはわかってはいる。
たとえば、菊乃さんの手を借りて今をなんとか乗り越えたとしても、新しい道を常に模索していかなければまた同じ繰り返しになってしまうだろう。時流に乗れず再び業績が低迷したとき、こんな好条件で手を差し伸べてくれる人が現れる保証はない。
その点、千秋さんはタイルの製造という新たな道を示してくれた。それを生かしきれるかは未知数だが、少なくとも無策の状態ではない。加藤の努力次第では、千秋さんの言った通り再建だって可能になってくる。
つまり、父の意見だなんて言ったところで、行き着く先は変わらないのだ。