跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
見合から三カ月後、私と千秋さんは無事に入籍をして夫婦となった。ずいぶんと急な話だったため、とりあえず身内を集めて記念写真だけは撮って、式については加藤家の情勢が落ち着いてからという話になっている。

入籍に伴って、私は千秋さんの暮らすマンションに移り住むことになる。
見合いの日以来、彼とは互いの家への挨拶などで数回顔を合わせてきた。それから、何回かメールのやりとりもした。

けれど、それだけの関りでは相手を完全には理解しきれず、不安は残っている。


引っ越しをするその日、両親への挨拶も兼ねて千秋さんがうちまで迎えに来てくれた。まだ梅雨は開けておらず何日も雨天が続いていたが、今日だけはまるで私たちの門出を祝うように青空が広がっている。

「千秋君、いささか子どもっぽいところのある娘で迷惑をかけてしまうだろうけど、どうかよろしくお願いします」

そう頭を下げた父に千秋さんが対応しているのを、複雑な心境で見つめる。
うちの会社を助けてくれるのは本当にありがたいが、交換条件のようにして決まった結婚生活は、本当にうまくいくのだろうか。
いざそのときがくると、たしかに覚悟を決めたはずだったのに不安がよぎる。


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