跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
「愛佳」

男性ふたりがやりとりする間、母がそっと声をかけてきた。

「なにかあったら、いつでも電話してこればいいからね」

「うん」

「幸せになるのよ」

うっすらと涙を浮かべた母を安心させるよう、なんとか笑みを返す。

「もちろん」

私は今後も、これまで通り加藤製陶の仕事を手伝っていく。だから、父と毎日職場で顔を合わせるのは変わらない。

でも、専業主婦として家庭を守っている母と過ごす時間は、これからうんと減っていく。それを思うと、もうとっくに成人をした大人だというのに、たまらなく寂しくなる。

瞬きを繰り返して、涙が滲みそうになるのをなんとか防ぐ。「いってきます」と声をかけると、名残惜しい気持ちを振り払って千秋さんの車に乗り込んだ。

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