跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました～年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛～

千秋さんが促すと、阿吽の呼吸のようにすぐさま志藤さんが資料を取り出して手渡していく。
さっと目を通すと、瞬時には理解しきれないようなグラフも並んでいたが、少しでも役に立ちたくて必死に読み込む。

「事前に伝えてありますが、加藤製陶には今後タイルの製造を再開してもらいます。そのため、ある程度の採算が見込まれる商品以外の生産は、一旦廃止していただきます」

わかってはいた話だが、これまでカップや皿などの陶器を主力商品としてきただけに、それを止められるのは複雑な気持ちになってしまう。それにタイルの製造を停止したのは、もうずいぶん前だ。今さらそこに重きを置いて、果たして盛り返していけるのだろうか。

千秋さんを疑うわけではないが、これまでの方針と真逆を行くような提案に不安が拭えない。チラリと横を見ると、父は少しも表情を変えないまま書類を読み進めていた。

「昔は、タイルといえば風呂場やトイレの床に使用され、そのデザインは変わり映えのしないものばかりでした。それが最近では、ユニットバスや洋式トイレが主流となり、タイルの使用は格段に減りました」

祖父母の住んでいた地域でも以前はタイルの使用が見られたが、最近では改装をして今どきの様式になっている家の方が圧倒的に多くなっている。