跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
手配しておいたタクシーに乗り込むと、一気に疲れを感じて無言のまま外の景色を眺めていた。都会のようなにぎやかさはないが、それでも私の幼い頃と比べたらこの辺りもずいぶんと開けてきたようだと、その変化に言葉にできない寂しさを感じる。
感傷に浸っている間に、宿泊するホテルに到着した。今回は志藤さんが、隣り合ったシングルの部屋を予約してくれている。結婚したといっても今のところ私たちはそんな関係になっていないから、この配慮はありがたい。
そうたしかに安堵していたはずなのに、いざ部屋の前に到着した途端になぜか離れがたくなってくる。今夜はここで千秋さんとお別れだと思うと、もやもやするのはなぜだろうか。
「えっと、明日の朝は七時でしたね? 一緒に朝食を食べて……」
エレベーターを待っていたときにも確認したのに、再び同じ話を持ち出した理由が自分でもわからない。
「さっきも聞いてたな。なんだ、愛佳。俺と離れるのが寂しくなったのか? なんなら、一緒に寝てやろうか」
同室がいいとまでは言わない。ただちょっと、もう少しだけ一緒にいたいというか、話をしていたいというか……。自分でも理解できない感情が、私の中で渦巻いている。
でも、私にそれを素直に口にできるわけがなくて、ついいつものように強がってしまう。
「そ、そんなわけないじゃない!」
「本当に?」
むきになって声を上げた私を、千秋さんがおもしろそうに覗き込んでくる。
「ほ、本当だから」
「なんだ、残念。俺は一緒がよかったのにな」
「っ……」
千秋さんの挑発に、じわじわと顔が熱くなる。
「じゃあな、愛佳。寝坊するなよ」
ポンポンと私の頭に手を乗せた彼は、「おやすみ」と手を振りながら自分の部屋に入っていった。
感傷に浸っている間に、宿泊するホテルに到着した。今回は志藤さんが、隣り合ったシングルの部屋を予約してくれている。結婚したといっても今のところ私たちはそんな関係になっていないから、この配慮はありがたい。
そうたしかに安堵していたはずなのに、いざ部屋の前に到着した途端になぜか離れがたくなってくる。今夜はここで千秋さんとお別れだと思うと、もやもやするのはなぜだろうか。
「えっと、明日の朝は七時でしたね? 一緒に朝食を食べて……」
エレベーターを待っていたときにも確認したのに、再び同じ話を持ち出した理由が自分でもわからない。
「さっきも聞いてたな。なんだ、愛佳。俺と離れるのが寂しくなったのか? なんなら、一緒に寝てやろうか」
同室がいいとまでは言わない。ただちょっと、もう少しだけ一緒にいたいというか、話をしていたいというか……。自分でも理解できない感情が、私の中で渦巻いている。
でも、私にそれを素直に口にできるわけがなくて、ついいつものように強がってしまう。
「そ、そんなわけないじゃない!」
「本当に?」
むきになって声を上げた私を、千秋さんがおもしろそうに覗き込んでくる。
「ほ、本当だから」
「なんだ、残念。俺は一緒がよかったのにな」
「っ……」
千秋さんの挑発に、じわじわと顔が熱くなる。
「じゃあな、愛佳。寝坊するなよ」
ポンポンと私の頭に手を乗せた彼は、「おやすみ」と手を振りながら自分の部屋に入っていった。