跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
〝東京からきたお偉いさん〟の意外な姿に最初こそ驚いていた彼らも、わざわざここまで足を運んでくれたのだと、千秋さんに好感を持ちはじめたのが伝わってくる。質問を受けている側に、面倒そうな素振りはいっさいない。

私たちが立ち去る頃には、この人が加藤製陶を救ってくれるのだと、期待を込めた視線を感じたのは、私の思い違いではないだろう。


明日には東京へ帰るのもあって、目まぐるしいスピードで仕事をする千秋さんに、叔父も驚いたようだ。
途中で休憩を挟みつつ、夕方になってすべての予定を終えると、まるでお約束のようにそのまま叔父の家に連れていかれた。

こういうのをデジャブと言うのだろうか。昨日と同じメンバーが……いや、それ以上いたかもしれない。長机を囲むたくさんの面々が、私たちを迎え入れてくれた。

申し訳ないとチラリと千秋さんを見ると、意外にも迷惑そうな様子はない。こうなると予想していたのか、彼の表情は穏やかだ。
 
嫁自慢からよくわからない話まで散々盛り上がった宴は、今宵も遅くまで続く。千秋さんに対する遠慮がすっかりなくなった時点で、この人たちは彼を完全に受け入れたのだと安堵した。
誰もが昨夜よりもさらに砕けて親しげで、それを見ていた私は、千秋さんとふたりでここに来られてよかったと頬を緩ませた。

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