跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
岐阜から帰って一週間も経たないうちに、千秋さんは自ら加藤製陶の再建の最終案を作成してギャラリーを再訪した。もちろん私も、話し合いに同席させてもらっている。

「いただいたカラー見本を見ましたが、想像以上に種類が多い。同系色でもわずかずつ違うものがあるので、いろいろと幅が広がりそうです」

そこはこちらとしても自信をもっているところだ。まるで色の図鑑を見ているような豊富さで、先日の新橋色のように聞きなじみのない色もたくさんある。

「それで、今後の方針ですが……」

岐阜へ行く前に大まかな内容は確認し合ったが、さらに詳しい話は私もまだ聞いていない。一体どんな提案をされるのか。
甘いかもしれないが、利益を重視するあまり従業員の心情を無視するような事態だけは避けたいのが私の本音だ。

「再確認ですが、加藤ブランドの高級ラインはそのまま継続させます。もともとその方針でしたが、改めて押さえておきます」

及川側にすれば、援助をする見返りとして絶対に外せない条件になる。

「もちろん異論はありません。ただ……お恥ずかしい話ですが、今のままのやり方では加藤ブランドの将来も先細りで……」

若干申し訳なさそうな顔をして話す父の言い分は、もっともだ。

「そうさせないために、うちが協力をしているんです」

千秋さんに自信満々にそう宣言されると、不思議と大丈夫そうだと前向きになる。それは父も同じだったようで、腰を落ち着けて聞く姿勢を作った。

「具体的なプランですが、加藤ブランドとコラボを発表するタイミングで、名が知られるようになるきっかけとなったタンブラーの再販をしましょう。それを大体的に宣伝して、話題集めをしてはどうでしょうか。もちろん完全に同じものだけでなく、いくつか時流に合わせた色味や、手触りのものも加えて」

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