跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
おそらく水面下では、千秋さんから父への打診があったのだろう。父の方に、驚いている様子はない。
ある程度の確信が持てたからこそ、こうして私にも開示されたに違いない。

交渉はまだだが、ほかにもコラボが見込めそうな企業の名も複数挙げられている。そのいくつかは千秋さんが話せば通る可能性が高いのだという。過去に恩を売っておいたとか、手を組んだ経験がある会社で、その多さに驚いた。これだけの人脈を築くのに、この人は一体どれほどの努力と苦労を重ねてきたのだろうか。
 
千秋さんに触発されて、私の中にむくむくとやる気が湧いてくる。

「例えば、特別なコーヒー豆と加藤のマグカップをセットにするっていうのもいいかも。それならカフェで売るだけじゃなくて、このギャラリーにも置けるんじゃない? ギャラリー限定のデザインなんていうのもおもしろそう。ああ、アルコール類とのコラボもいいかもしれない」

思いついたまま話せば、千秋さんが笑みを浮かべてうなずいてくる。

「その通りだな」

彼に肯定されると、戦力として認められるようで気分が高揚する。
初対面で語った意見はあまりにも未熟ですぐさま論破されてしまったが、少しは成長した姿を見せられたと、気持ちが大きくなる。

「ギャラリーに、商品の使い方事例として偽の茶菓子を乗せた銘々皿なんかをディスプレイしてあるけど、もしかしたらカフェを併設して加藤の陶器を実際に使用してもらうのもいいかも」

調子に乗ってさらに踏み込んだ提案をすると、千秋さんは賛成するようにうなずいた後に、苦笑して私を諫めた。

「それを実現するのはもう少し先だな。だが、客の反応次第では検討する価値のある案だろう」

先走ってしまったが、否定はされていない。いつかきっとそれも実現できるかもしれないと、明るい希望を抱いた。

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