跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
『妙ちゃんもその旦那さんももう亡くなっているのに、いきなり私がしゃしゃり出ていって手助けするって言っても、すぐには信じてもらえないかもしれないでしょ? だから提携の話をしながら孫同士を引き合わせて、親戚として再建のお手伝いを申し出ようと思ってね』

俺には〝だから〟のつなぐ前後の関係性がまったく理解できないが、祖母の中ではすっかりストーリーが出来上がっているようだ。
おそらく彼女にとっては、手助けをするのと同じぐらい縁続きになるのも重要なのだろう。それほどその友人に恩義を感じているのか。

うっとうしく思う反面、楽しそうに語る祖母を見ていると、無下にするのも気が引ける。
ビジネスに限った話なら、必要ないと判断すれば手を出さない。しかし、そこに紛れ込んだ身内の話に絆されたあたり、自分もまだまだ甘いのだと自身に呆れた。

相手に会うだけ会ってその場で断ったとしても、祖母は再建の手助けをすると約束すれば、結婚自体は阻止できるだろう。彼女の申し出を受けるかどうかの判断は、加藤側に委ねればいい。
俺の仕事は、加藤の支援をするきっかけづくりとその後の祖母のフォローだな。

縁談は断るという自分の思惑を通すために、祖母には相手の女性とふたりだけで会うという条件を渋々承諾させた。この人を同席させようものなら、その場で結婚の日取りまで決められそうでたまったものじゃない。

< 86 / 174 >

この作品をシェア

pagetop