跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
お礼がしたいと言う愛佳が、ネクタイや高級な万年筆などと提案してきたときには、正直吹き出しそうだった。まあ、彼女の考えつくものなどそれぐらいだろうと予想はできたが。

とくに明確な回答を引き出すつもりはなかったのに、俺に尽くそうとする彼女があまりにもいじらしくて、『愛佳にしか払えない対価を』と困らせたくなった。最後は降参して、口づけぐらいは許されるかという下心とともに。

だがそこで『子ども』と言い出すなど、誰が想像できただろうか。
彼女の覚悟が固まらないまま手を出してしまわないように、せっかく寝室をわけてきたというのに、あれほどかわいい姿を見せられたらもうたまらない。
おまけに、まったく拒否してこないどころか、愛佳は早々に俺を受け入れた。

彼女の俺に対する気持ちはまだ育ち切っていないだろうとわかっていたが、いずれはこうなる予定だったのだ。順序が少々前後しようともかまわないだろう。彼女の好意を勝ち取る準備など、とっくにできているのだから。
 
それでも子どもを作るのだけは一方的に決められず、呆けている状態ではあったが改めて避妊はしないと許可をとった。
もとより彼女の一生は自分が責任を持つと、結婚を迫った段階で覚悟は決まっている。この行為で子どもができても、俺としてはなんの問題もない。むしろ、歓迎する。
加藤の仕事との兼ね合いを見計らってからと考えていたが、本人も合意したのだからもう遠慮はなくなった。


目を覚ましたとき、愛佳はどんな反応をするだろうか。それを想像するだけで口元が緩んでしまう。きっと彼女は、これまで以上に俺を楽しませてくれるのだろう。
華奢な体をそっと抱きしめ直すと、手触りの良い髪に顔を埋めて眠りについた。

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