跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
この日から、彼に言われた通り一緒のベッドで眠るようになった。
はじめは緊張でがちがちになってしまい、千秋さんに苦笑されるほどだったが、私が落ち着くのを気長に見届けるような人ではない。

毎晩、不意を突くように深く口づけられて、すっかり気が抜けてしまった私に遠慮なく触れてくる。

『愛佳、今夜もかわいがってやる』

耳元でそう囁くと同時に、優しくも濃密な愛撫がはじまる。
熱い視線に毎回翻弄されて、わけがわからなくなるほど乱れてしまうのは私だけで、千秋さんは絶対に冷静さを失わない。余裕綽々で、そのまま最後までしないで私だけを気持ちよくさせて終わってしまう夜もある。

私がぐずぐずになっていく様を楽しんでいるかもしれない。時折、お願いしても電気を消してもらえないときもある。『綺麗な愛佳を見たい』なんて言われたら、たまらなく恥ずかしいのにそれ以上強く出られなくなる。

ほかの夫婦はどうなのか知らないが、千秋さんから一晩に複数回求められたことは一度もない。毎回先に私が寝入ってしまい、それ以上手の出しようがないのも否定できないが。

でもそれは、千秋さんのせいだと主張しておきたい。
私が必死で眠気を堪えていても、まるでペットを愛でるように髪をなでてくるから、心地よすぎていつも負けてしまうのだ。

私が意識を手放した後、千秋さんもすぐ寝ているのだろうか。それとも、起き出してひとりの時間を謳歌しているのだろうか。

普段は彼に対して言いたい放題している私だけど、夜の生活に関する気がかりはなにひとつ聞く勇気が持てない。

彼が私との関係をどう思っているのか。
心の片隅に巣食う不安や心配事には、気づかないふりをした。

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