跡継ぎを宿すため、俺様御曹司と政略夫婦になりました~年上旦那様のとろけるほど甘い溺愛~
数回ほど出勤すると、岸本さんはすっかり加藤の社員と打ち解けていた。というより、社員らが彼女を頼りにし出したというべきかもしれない。

会議を開けば常に彼女が中心となり、問題をどんどん解決に導いてくれる。

「及川の方で、内覧会のご来場者やご成約者にお渡しするノベルティーを検討しているんですが、その点も加藤製陶に依頼するのは可能でしょうか」

タイルのデザインが決定して製造がはじまるのと並行して、復刻版のタンブラーの話も進められている今、社内はにわかに忙しさを増した。
明るい見通しに社員はやる気に満ちており、さらに業務が増えようと、それが前向きのものならば進んで受け入れる空気になっている。

岸本さんが持ち込んだ及川の要請に、ますます想像が広がる。
ノベルティーが食器では、当たり前すぎておもしろみに欠ける。どうせならタイルを使用したいところ。重くないものの方がいいだろう。柄物のコースターや、木枠をタイルで飾った写真たてなんかいいかもしれない。
こうやって、あれこれ考えている時間が楽しく仕方がない。


間近で見る岸本さんの仕事ぶりは、なにに対しても的確で速い。少しでも彼女の仕事の進め方を見習いたくて、可能な限り側にいさせてもらうようになった。

それでわかったのが、彼女はとにかく判断するまでが速いということ。自分ならいつまでも時間をかけて悩んでしまうところでも、岸本さんはメリットとデメリットを明確にして、根拠に基づいて早々と決めていく。
こういうところはどんどんと見習っていきたいが、簡単にできるものではない。自分の決断に自信を持てるよう、さらに経験を積む必要がある。

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