強面カイくんの、行き過ぎる溺愛
その日の夕方。
二人は外食しようということになり、街に出ていた。

「ユウちゃん、何食べたい?」
「うーん、カイくんに任せる」
「僕が決めるのは構わないけど、必然的に“完全個室”になるよ。いいの?」
「うん」
「ユウちゃん、わかってる?
完全個室ってことは、僕の好きなように弄ばれるよ?ユウちゃん」
「え?私、遊ばれるの?」
「そうだよ。二人っきりなんて、僕にとっては天国だからね!ユウちゃん、ご飯食べれるかな~?」

「え……私、お腹空いてるの」
「だよね?だったら、僕に決めさせない方がいいんじゃない?」

「じゃ、じゃあ……そこのお好み焼きは?」
パッと目についた店を指差した。

「ん。わかった!行こ」

━━━━━━━━━━━━━━
「━━━━━━満席なのでそちらの紙にお名前を書いてお待ちください」
名前を書き、椅子に座ろうと見渡す。

「カイくん、向こうの椅子あいてる。
座ろ?」
二人並んで座る。

しばらくすると、結理の隣にチンピラ風の男が座ってきた。
かなりガタイがよく、恐ろしい雰囲気を醸し出している。恋人らしき女性の腰を抱いている。

「ユウちゃん、大丈夫?窮屈そう…」
「ん?大丈夫だよ!」

長椅子に快李、結理、男性、女性の順に並んで座っていて、男性が大柄な為小柄な結理は小さくなってしまう。

「すみません。
もう少し、横ずれてくれません?」
快李は、できる限り冷静に男性に声をかけた。

本当は「そこ退け」と言いたかったが、結理の前だ。
できる限り、穏やかでいたい。

「あ?なんでだよ!?」

「は?なんで?見てわかりません?僕の奥さん、窮屈で苦しそうですよね?僕は、端ギリギリだし。
そちらは、まだ余裕ですよね?」

「めんどくせぇ」
そう言って、男性が少し女性の方にずれた。

「は?」
快李の雰囲気が落ちていく。
「カイくん、落ち着いてね」
結理は恐ろしくなり、慌てて快李を落ち着かせる。

「めんどくせぇってなんだよ…」

「あ?」

「めんどくさいんだったら、そもそも座るな」
快李は、男性を睨んでいた。

「お前、誰に向かって言ってんの?」

「誰?え?バカなの?誰がどう見てもお前に言ってるのわかるだろ!」

「てめぇ!!」
快李に凄んでくる男性。胸ぐらを掴んでくる。

「━━━━━!!!!?
カイくん!!?」

「ユウちゃん、ちょっと待ってて!」
結理に微笑むと、男性に耳打ちした。

「外出ろよ……」
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