強面カイくんの、行き過ぎる溺愛

カイくんはあくまで一途

快李の重い愛情をこんなにうけていても、結理は快李が大好きだ。

強面ではあるが、快李は容姿の整った男性。

結理に不安は付き物だ━━━━━


出勤前の電車内。
座席に並んで座っていると、向かいに座っている女子学生が快李を見て何やらこそこそ話をしている。

結理は思わず耳をすます。

｢めっちゃ、カッコいいよね～｣
｢首の刺青がちょっと怖いけど、またそれがカッコ良さを引き立ててる感じだし｣
｢こっち見ないかなー？｣
｢隣の彼女？のことばっか見てるしー｣

結理は、複雑な気分だった。

確かに自分の旦那さんを誉めてもらえるのは嬉しい。
しかし快李の良さは、自分だけが知っていればいい。

正直…快李が強面で人が近寄らないのは、結理にとって安心材料なのだ。

快李は結理に出逢い愛することで、強面の顔に穏やかさが表れ、昔より角が取れ、顔が柔らかくなっている。

その為、快李の容姿の良さに気づく人間が年々増えているのだ。

結理は思わず、快李の腕にしがみついた。


そんなある日だった━━━━━━━

世間はバレンタインで、浮き足立っていた。
それは今年は金曜日がバレンタインデーで、週末を向かえるからだ。

そして、浮き足立っているのは結理も同じ………だったはずだった。
昼間では━━━━━━━


いつもより楽しそうに勤務をしていた、結理。
明日が金曜日。
明日は、仕事も休みなので日中ゆっくり買い物へ行き快李の為に手作りチョコを作ろうと思いをめぐらせていた。

いつもは、快李に禁止されている調理もバレンタインデーだけは許可を得ている。

しかしその思いは、ある人物達の来店で一気に落ちた。

｢いらっしゃいませ！何名様ですか？｣
｢三人です｣

昼休みらしきOLの接客をする、結理。
席に誘導しようとする。
｢すみません。店員さんは、乙坂社長の奥様ですよね？このお店のオーナーの｣
｢え？はい…｣
｢ちょっとだけ、お話いいですか？｣
｢え━━━━━｣


外に移動する。

｢あの、何ですか？｣
｢社長を縛りつけるのやめてください！｣
突然、責めるように声を荒らげた女性の一人。

｢え？｣

｢貴女方がとても仲良くて、ラブラブな夫婦なのは十分承知してます。社長が奥さんにベタ惚れなのも。でもバレンタイン位いいじゃないですか？｣

｢あの、ごめんなさい。おっしゃってる意味がわからないんですが…？｣

｢そのままの意味です！奥さんのせいでみんな辛い想いをしてます｣

｢え？それって……｣
｢バレンタイン、毎年はっきり言われます。
確かに断られることわかって渡してる私達も私達ですが……。私達はお疲れ様の意味でも受け取ってほしいんです。色々お世話になってるし…｣
｢そうですよね…｣
｢だから、社長に言ってください！｣

｢え？でも私は縛りつけてるつもりは……｣