強面カイくんの、行き過ぎる溺愛
快李は思う━━━━━

結理から渡されたバレンタインチョコ。
よく見ると
【女性社員一同】
と書いてある。

「ありがとう!
……ってこれ、女性社員って………」
「昼間に送られてきたの。きっとカイくんが受け取らないからじゃないかな?」

あっさりとした口調で結理が言う。
ユウはこれを見て、苦しくならなかったのだろうか?

でも、なんで?
こんなことを………。
だから、嫌なんだ。
だから嫌われるようなことになっても、今後こんなことがないようにわざわざ酷い言い方をしてまで断ってるのに。
女ってなんでこんなことをするんだ。
俺にはわからない。

「………」

「カイくん?開けないの?」
ゴミ箱に捨てた、快李。
静かに結理に向き直り、言った。

「ユウはいいの?これで……」

「え?」
「これって明らかなユウへの嫌がらせだよな。
女の気持ちなんてわかんねぇけど、そうだよな?」

「でもきっとお疲れ様の意味もあるんだろうし。ほら、お店!大繁盛なんでしょ?」

「俺はね、ユウ以外の女なんてどうでもいいんだよ。ほんとは。ただ、仕事とかの兼ね合いもあるし、しかたなく関わってるだけで。
それにもし逆なら、俺は絶対嫌だ!
ユウが俺以外の男にチョコあげるなんて。
例え気持ちがなくて、義理でも。考えるだけで、嫉妬で狂う」

「カイくん…」
「いつも言ってるよな?俺にはワガママ言ってって!ユウだけが、俺にワガママ言うの許されるんだ。
……………だからもう一回聞く。
ユウはいいの?これで」
快李が結理を真っ直ぐ見て言い放つ。

結理は、意を決して言った。
「いいわけないよ!嫌に決まってるでしょ?カイくんは私のカイくんだもん。でも社員さん達の気持ちも━━━」
「俺が!!!
聞いてるのは、ユウの気持ち!!社員なんてどうでもいいんだよ!!?
社員達への労いは色沢とちゃんとしてる!!
他にどうしろって言うんだよ!!?
俺はユウと一緒に幸せになる為に生きてんだよ!!」

「………」

「……………ユウが笑ってくれないと、何の意味もねぇんだよ……!!?」
快李の瞳が潤んでいた。

“あの”快李が、泣いている。

「カイくん…ごめんね…ごめんなさい…」
「もういいよ。その代わりユウの本音が聞きたい!」

「私だけを……」

「ん?」
「私だけを見ていてほしい。私だけがいい!!
何に対しても、どんなことも………」

「うん!!もちろん!そうするよ!これからも!
僕はユウちゃんが、一番大切なんだから!」
結理を抱き締める快李。

「ユウちゃん、忘れないで?
男はね。本気で好きな女には、いつも笑っててほしいんだよ?
男は、その笑顔で毎日頑張れるんだ!」

やっと結理の顔に笑顔が戻った。
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