強面カイくんの、行き過ぎる溺愛
色沢は、結理にとって兄のような存在だった。

結理のことが好きすぎて周りが見えなくなる快李と結理の間に立ち、快李を落ち着けてくれていた。

「やだよ!ユウちゃんと離れたくない!」
「大丈夫だよ!ランチだけだから」

久しぶりに結理が、友人と女子会をする事になりランチだけ別々でと快李に言うと、快李は駄々をこねだしたのだ。

「ユウ」
「え……カイ…く…?」
「俺を一人にするのかよ……いいの?俺を、一人にして。
後が怖いよ……?それとも今ここで、ユウが何処にも行けないように閉じ込めようか?」

快李は都合が悪くなると、よく脅すように結理に詰め寄る。

「快李、やめろよ」
「あ?色沢には関係ねぇだろ!?」
「関係ある。
俺は、結理ちゃんの友達だから」
「は?」

「たまには結理ちゃんを、解放してやれよ。
つか!大好きなんだろ?結理ちゃんこと。
だったら、悲しませるな!
ちゃんと、結理ちゃん自身を見てやれよ!」
色沢は快李を見据え、ゆっくり説得する。

結理が悲しそうに眉をひそめている。
快李は、深呼吸して結理に向き直った。
「………わかった。ごめんね、ユウちゃん」

色沢の言うことは、案外すんなり聞き受け入れる快李。
快李と色沢は、とても良い関係なのだ。


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「色沢はさぁ」
「んー?」

「なんで俺に声をかけてきたの?」
出張行きの車内。
窓の縁に頬杖をついて、窓の外を眺めていた快李。
窓の外を眺めたまま、不意に言った。

「大学ん時?」
「うん」
「声をかけたかったのは、結理ちゃんにだよ」

「は?」
色沢に向き直る。

「“あの”乙坂 快李の彼女だよ?
気になるじゃん!」
「意味がわかんねぇ」

「快李、高校入学した時、不良連中を返り討ちにしたんだろ?」
「うん」

「その不良の中に、俺の兄貴のダチの弟って奴がいたんだ。そいつって、チョー悪でさぁー
とにかく、気に入らないことがあるとすぐ手を出す最低な奴だった。
喧嘩が強くて、俺のダチもいつもやられてて……
俺も当時は、勝てなかった。
そんな奴を、返り討ちにしたって聞いて快李に興味湧いたんだ。そしたら、中三ん時の同級の乙坂 快李じゃん!
実は高校に見に行ったことあるんだ!
正直、びっくりした。
快李が、あまりにも恐ろしくて……
顔ってゆうより、雰囲気に……何て言うのかなぁー“俺に近づくな。近づいたら、殺すぞ!”みたいな?
そんな快李の彼女が、結理ちゃんみたいな可愛い子だよ?興味湧くじゃん!
それに、快李の心を奪った結理ちゃんがどんな子かってのも、気になって……
だから、二人に声をかけたんだよ」

色沢は、バックミラー越しに快李を見て微笑んだ。
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