強面カイくんの、行き過ぎる溺愛
「え?カフェ?」

それから五日後━━━━━━
店長に頼んで、いつもより勤務時間を延ばしてもらい仕事をすることで、なんとか寂しさを紛らわせていた結理。

明野からカフェに行かないか誘われていた。

「ほら、これ!
ここのフレンチトーストが旨いって聞いてさ!
一緒にどう?」
明野が、パンフレットを見せながら言った。

「えーと……これは、二人でですか?」

「うん」
「二人はちょっと……」
「やっぱ、ダメだよな……」

「何の話してるんですか~?」
そこに同僚の女性従業員二人が話しかけてきた。

「あー!ここ、フレンチトーストが美味しいって今話題になってるカフェでしょ?
行くの?」
「あ、いや。
今、断られてたとこ」

「フフ…明野さん、乙坂さんはあの社長のお嫁さんですよー!ダメに決まってるじゃないですか~」
「だよね……」

「━━━━━あ!じゃあ、みんなで行きません?
ここにいる四人で!
それなら、乙坂さんもいいんじゃない?」
一人が提案する。

「あ、それなら」
「ね?明野さん!」
「あぁ!じゃあ、行くか!」

「あ、明野さんの奢りで~」

「フフ…わかったよ!」


明野の運転で、少し車を走らせカフェへ向かった一行。
「乙坂さん、社長って家ではどんな感じなの?」
「どんな?
常に一緒にいるって感じです」
「社長、甘えん坊なの?」
「うーん…甘えてるのは、私の方かな?」

「じゃあ、今回の社長の出張、寂しいわね……」

「あ、はい…実は……」


「そもそも、社長のどこに惚れたの?
社長と乙坂さんって、真逆だよな……!」

運転しながら、黙って聞いていた明野。
不意に言った。

「高校生の時の、私の一目惚れです」

「え?乙坂さんが?」
「はい」
「そうなんだ…」

「明野…さん…?」



「━━━━━んー!美味しい~」
「ほんと!旨っ!!」

「明野さん、ありがとうございます!
連れてきてくれて!」
微笑み言った、結理。

“ありがとう!連れてきてくれて!”

「………佐織…?」
明野は、頭を振る。


それから、近くの高台の公園に向かった。
「綺麗……」
「ほんと…風冷たいけど、気持ちいい~」
「素敵ね~」

結理達女性三人は、公園から見える景色にうっとりしていた。

「明野さんも、こっちで見ましょ?」
結理が明野を見上げ、微笑んだ。

「━━━━━━!!!?」

「ん?明野さ━━━━━」

明野は無意識に、結理を抱き締めていた。

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