強面カイくんの、行き過ぎる溺愛
「佐織…」
「え?明野…さ…」
「もう…何処にも行かないでくれ……」

明野の小さな呟き。
あまりにも、切ない呟き。
結理は、どうしても振り払えなかった。

女性二人は、ただ…その光景を固まったように見ていた。


数分間、ただ…時が止まっていた━━━━━━


そして、その頃の快李━━━━━

「ここの公園から見える景色が綺麗だから、この近くにカフェオープンさせたらいいと思うんです!」

色沢や女性社員達と、なんと高台の公園に来ていた。

「へぇー、いいんじゃない?
なぁ、快李。
……………快李?」




「何…やってんの……!!?」
快李は、明野に抱き締められている結理を見ていた。



快李の怒りの声で、また時が動き出した。

快李にとってこの光景は、ただ…心を抉るような痛みしか与えなかった。
自分の命その物とも言える程の存在である結理が、振り払うこともせず、自分以外の男に抱きすくめられている。

「早く……離れろよ、二人とも……
ユウ、俺を殺してぇの?」

「はっ!!か、カイくん!!?
どう…して…?」


「ユウちゃん、おいで?今すぐに、僕のとこに、早く!」
口調は同じだが、雰囲気がいつにも増して恐ろしい。

「え?う、うん…」
快李の元に向かうと、すぐさま抱き上げられた。

「ひゃぁ!!?カイくん!?下ろして!!」
「あ?黙れよ……!?
ここで、犯されてぇの?」
「……っ…!!?」

まさに、悪魔のようだった。

「色沢!!」
「え?」

「帰る」

「快━━━━━お前っ……!!!?」
快李の肩を掴み、顔を見る色沢。
快李のあまりにも恐ろしい姿に、声が出なかった。


「今の俺には何もかもがどうでもいい。
ユウ以外の人間……殺して回りたいくらいの怒りが込み上がってる。
だから、俺とユウを帰してくれ」


色沢は、黙って車のキーを快李に握らせた。

快李は結理を抱き上げたまま、車に向かった。

車に着くと、助手席に結理を乗せた快李。
シートベルトを閉め、自身のネクタイを外し結理の両目を目隠しした。

「ユウ、何があっても、俺がいいって言うまで外すなよ。わかった?」
「カイくん!お話聞いて!」
「今は無理。
ユウの話を聞けるだけの精神状態じゃない。
それよりも、俺の言うことを聞けよ」
「……わかった」

そして、運転席に乗り込み発進させた。


結理は、心なしか震えていた。
これから、どうなるのだろう━━━━━と。
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