強面カイくんの、行き過ぎる溺愛
どのくらい経ったのだろうか。
目が塞がれている為、時間の感覚がわからない。

車が停まって、助手席が開く音がする。

「ユウ。
俺の首に手を回すよ?」
結理の両手を持ち、自身の首に回させた。
目隠ししたまま、抱き上げられた。

鍵を開ける音がして扉が開き、匂いでなんとなく自宅に着いたのがわかった。

抱き上げたまま、家の中を移動しある部屋に入る。

「ここ……!!?」
また、匂いでわかった。

“あの”部屋だ━━━━━━━━

「カイくん!!ここはやだ!お願い!!」

「ダメだ。
悪いお姫様には、ここで反省してもらわないと……」

部屋内のベッドに下ろされ、目隠しを外された。


お洒落なピンクの天窓付きのベッド。
ピンクのカーペットに、白いテーブル。
ピンクのレースカバーのソファ。

いかにもお姫様の部屋らしい、可愛らしい部屋。

ただこの部屋の至る所に、カメラが設置されている。
その真っ黒な、部屋に似合わない“それ”がやけに恐ろしい。

そして、もう一つ恐ろしいのが……

「はい!ユウ。足を出して?」
「やだ!」
「ユウ。ほら、いい子だから」
「お願い!!カイくん!お話聞いて!
お願い!!」

「話、聞いてほしいんなら、足出せよ!
できねぇの?」

「はい…」
ゆっくり片足を差し出すと、カチャンと不気味な音がして足枷をはめられた。

「よし!
はい、ユウちゃん。
話、聞いてあげるよ?」

ニコッと微笑み言った、快李。
結理の隣に腰かけ、頭をゆっくり撫でた。



「明野さんは、私じゃなくて佐織さんを抱き締めたんだよ!」

「は?佐織って誰?」

「明野さんの亡くなった恋人。抱き締められた時、明野さんが呟いたの。
“佐織…もう、何処にも行かないでくれ”って!
私と佐織さん、雰囲気が似てるんだって!
だから、明野さんは佐織さんを抱き締めたの。
ごめんね、カイくん。
その声があまりにも切なくて、振り払えなかったの」

「……………だからって、あんな光景……
俺にとっては、地獄だ…」

「ねぇ、カイくん。
怒らないで聞いてね。
もしカイくんが亡くなったとして、目の前にカイくんと同じ雰囲気の人が現れたら、私もその人にカイくんを重ねて抱きつくかもしれない。
そう思ったら、明野さんをむやみに拒めないと思ったの。
だって、明野さんはいつも佐織さんを見てるから。
でも忘れないで?
私はもう……カイくんしか愛せないよ」

結理は、快李に抱きついた。
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