強面カイくんの、行き過ぎる溺愛
「ねぇ、カイくん」
「ん?」

「どっちの服が良いと思う?」
ウォークインクローゼットの前に並んで立っている、二人。
結理がワンピースを二着だし、快李に見せる。

「うーん…こっち!」
快李が、ネクタイをしめながら指差した。

「ん。じゃあ…こっち!」
ワンピースを着て、背中のファスナーをあげようとする。
すかさず快李が、ファスナーをあげた。

「あ、ありがとう!」
「フフ…ユウちゃんの首筋!綺麗…」
そう言って、首筋に吸い付いた。

「ひやぁ!あ、カイくん今!キスマークつけたでしょ!?」
「ううん。キスはしたけど、マークはついてないよ」
(ほんとは、はっきりついたけど……!)

「ほんとに?」
上目遣いで見る、結理。

「はぁ…」
「何?」
「可愛い…」
「え?」
「可愛すぎ…」
「今は、キスマークの話だよ」
「ユウちゃんが可愛くて、それどころじゃないよ」
「カイくんは、カッコいいよ」
「フフ…ありがと」
「とにかく!キスマークはダメだよ!
恥ずかしいんだから!」

「えー!いいでしょ?」
「ダメだよ」
「ユウちゃんが、僕のモノって分からせることが出きるでしょ?」
「じゃあ、私も、カイくんにキスマークつけるもん!」
「いいよ!いつも言ってるでしょ?
何処でもつけていいよって!」

「でも殆どスーツで隠れてるし、見えるとこは刺青があるし……
あ!そうだ!」
結理は引き出しをごそごそして、腕時計を取り出した。

「何?」
「この腕時計をしてって?私の、イニシャル入りー!
………って、あれ?パンパンだ…」
「ユウちゃんは、細いもんね!
でもいいよ!ユウちゃんがつけてって言うなら、つけてくよ!」
「やっぱ、いい……」
「どうして?」
「こんなのしてたら、お仕事しにくいでしょ?
私、カイくんの邪魔にはなりたくない!」

「………邪魔していいよ!」

「え?」
「ユウちゃんなら、何をされても嬉しい!
邪魔も、迷惑も、大歓迎!」
「……カイくん、優しいね……!」

「僕は優しくないよ。
ユウちゃんに、何かしら関わってたいだけ。
ユウちゃんが大好きなだけ。
僕程、酷い人間はいないんじゃないかな?
強面で、あんまり人が近づかないし。
しかも部下には、こんなじゃないよ。
冷酷ってよく言われる」

そう……
快李は、見た目が“かなり”恐ろしい。

快李の父親も強面で、何もしてないのに犯罪者と言われてしまう程。
その血を受け継いだ快李。
更にこの容姿のせいで、喧嘩を売られることが多かった幼少期。
なめられない為に胸と首には刺青、耳には計五個のピアスをつけている。

その上、性格もとってもきつい。

結理のことを“ユウ”と呼んだ先程の快李が本来の快李だ。

過保護な快李は、結理の前だけなのだ。
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