強面カイくんの、行き過ぎる溺愛
そもそも悪魔のような快李と、天使のような結理が出逢ったのはある意味運命のようなものだ。

高校二年の時に同じクラスになったのが始まりだ。

強面・刺青・ピアス、その上髪の毛も金髪に染めていた快李。

当然、誰も寄ってこない。
(しかも高校入学と同時に、先輩の不良に因縁をつけられ全員返り討ちにしたことも既に全生徒が知れ渡っていたから)

快李自身も、特に一人でいることに何の寂しさもなかった。

そんな快李に声をかけたのは結理だ。


「初めまして!相良(あいら) 結理です。
えーと…乙坂くん!よろしくね!」
隣の席に座った結理が、握手を求めてきた。

微笑み握手を求めてくる結理を見て、快李は固まった。

(この女、俺を見て何とも思わねぇの?)

「結理!やめときなって言ったでしょ!
怒られるよ!」
「え?どうして?挨拶くらい……」

快李が固まり何も反応しないので、結理もしぶしぶ差し出した手を引っ込めた。


「相良さん!」
「え?」
その日の帰り、今度は快李が結理に声をかけた。

「さっきはごめんね!」
「え?」
「俺……あ、僕、びっくりしちゃって!
僕、こんな容姿だからあんな風に声をかけられることなかったんだ。
だから、思わず固まっちゃって……」

「あ、そうだったんだぁ!
ううん、気にしないで!良かったぁー」
ホッとしたように微笑む結理を見て、快李の心が温かくなる。

(天使だ……////)

「改めて、僕からいいかな?
僕は、乙坂 快李です!よろしくね!」
と、握手を求めた。

「やっぱ、カッコいい…/////」
その手を微笑み握る結理の小さな手を見て、快李も初めて微笑んだ。



それからも“カイくん”“ユウちゃん”と呼び合い、少しずつ関係を深めていった二人。

完全な一目惚れだった結理に対し、快李は“可愛い天使みたいな子”という淡い恋心を抱く程度だった。

しかしこの快李の“淡い恋心”が狂おしい程の“狂愛”に変化したのは、高校三年の秋。


学校終了後、忘れ物に気づき取りに戻ったある日。
教室のドアを開けようとして、中から結理と友人の声が聞こえたのに気づき動きが止まった。

それは快李の話をしていたから。

「━━━━━━━だからね!乙坂くんのことは諦めなって!確かにチョーカッコいいけど、スッゴく怖いじゃん!」

「でも、私……好きなんだもん!
告白して断られたら考えるけど、まだ告白もしてないし……」

(好き?ユウちゃんが俺を?
マジかよ…////)
と、一人で赤くなっていると…………

「乙坂くん、裏で人殺してるって噂だよ!」

と、友人の声が響いてきた。

(は?なんで、そんな噂が流れてんだよ!!
つか、いっつもそうだ!根も葉もない噂が、流れてる)

「何、それ……
酷いよ!!!」

その時、結理の荒らげる声が聞こえてきた。
声から、結理が泣いているのがわかる。

「カイくん、そんな人じゃないもん!
とっても優しい人だよ?」
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