強面カイくんの、行き過ぎる溺愛
『指導係?』
「うん!」
『どんな人?』
「どんな?うーん…物静かそうな人」

『まさか、男じゃないよね?』
「まさか!女性だよ!」

『だよね。指導係か……
でもなんで、パートのユウが指導係なんかやんの?』

「え?」
(ユウ?)

『ユウ、今そこに店長いるんだよな?』
「え?う、うん」
『今から行くから』

「え…!!?」


数分後━━━━━━━━

店内奥の店長室のソファに、長い足を組んだ快李が店長を見据えていた。
実はこの店のオーナーは、快李なのだ。
「あ、あの…社長、今日はどのような?」
「どのような?わかんねぇの?
お前、ユウを働かせる時に言ったはずだ!」

“いいか!ユウに通常以上の仕事をさせるな”

「しかし、乙坂さ…あ、いや、奥様はとてもよく働いてくれるので、つい……」

「つい?ついって、何?」
快李は決して、店長から目を離さない。
「すみません!」
「指導はお前がやれよ。
これ以上、ユウに頼るな!」

「カイくん!!」
店長室から出てきた快李に、声をかける結理。

「あ、ユウちゃん!
店長に頼んどいたからね!」
「え……ま…さか……」
「ユウちゃんは、普通に仕事すればいいんだよ?」

「え?私、指導係なし?」

「当たり前!だいたい、パートのユウちゃんに指導係なんかさせるなんて最悪!!
もちろん、パートだから指導係ダメなんていうつもりないけど、僕はあり得ない。
“パートのくせに”って、思う奴が必ずいるから」

「………」
「ユウちゃん?」
俯く結理の頬に触れる、快李。

「酷いよ、カイくん」
顔を上げた結理の目は、潤んでいた。

「ユウ…?」
「私、嬉しかったのに……指導係、私のことを認めてもらえたみたいで。どうして、そんなこと言うの?」

「どうして?
僕にも、限界があるから」

「え……」

「僕はね。
本当は、ユウちゃんを外に出したくないの。
一歩も!
僕にとっては、ユウちゃんを働かせるってだけで苦しくなるくらいの地獄なんだよ。
なのに今日は残業。
その上、指導係!?冗談じゃない!!
ユウちゃんは、僕のモノ……誰にも……誰の目にも触れさせたくない……!
お願いだよ……僕以外から、頼りになんかされないで?」
そのまま結理を抱き締めた。

「うん…ごめん…なさ…い…」
結理は、そう言うしかなかった。

その日のパート帰り、結理はかなり落ち込み電車に揺られていた。


「カイくんは、ほんと…過保護だよなぁ……」



しかし快李の過保護という名の“支配”はこんなものではない━━━━━━

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