桜が咲く頃に、私は




「じゃあ、空とこの子があの日、事故に遭って死んだって言うの? しかも、天使に半年ずつ余命をもらって生き返った……なんて」


恐らく、どんな嘘をついたところで花子は納得しないと空も観念したのか、私達に起こったことを話したけど、反応は案の定といった感じだ。


こんな荒唐無稽な話をすぐに信じる人なんているはずがないよね。


恐らく広瀬に話しても、花子と同じ反応をすることだろう。


「そそ、それで、この二人は命を繋ぐために一日一回、10秒以上キスしないと行けないってわけ。ま、私も直接聞いたわけじゃないんだけど」


翠が補足するようにそう言うと、花子は呆れたように首を横に振って、部屋の中を見回した。


「ほら、だから信じてくれないって言っただろ。こんな話、信じるやつなんていないって」


確かに、花子は信じてくれないかもしれないけど、隠しごとがなくなった空はどこかスッキリしたような様子。


「当たり前でしょ。でも……妙に腑に落ちる部分はあるわ。あの日私は、ライブハウスで待ってたのに、急に出演キャンセルとか言われたから。大学を辞めたのだってそう。夢があるんだって、耳にタコが出来るほど聞かされてたのに、あっさり退学してさ。何もかもがおかしかったから」
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