桜が咲く頃に、私は
「それって、妹さんに聞いたわけ? まさか、また空が一人で抱え込んでるだけじゃないでしょうね?」


花子が言いたいことはよくわかる。


よくわかるけど……それに対する空の答えもわかっているつもりだ。


私だって何度も葛藤した問題だから、どんな答えでも共感出来るし、逆に否定も出来てしまう。


結局は自分で出した答えに従うしかないことも。


「聞けるはずがないだろ。そんなこと。でも、何も考えてないわけじゃない。俺が死ぬまでに遺せる物は遺すつもりだし、大切なことは伝えるつもりだ」


「そう……だったら、私も妹さんと同じくらい大切に想ってほしかったわね。家まで押し掛けて、空が死ぬって聞いて、私はどんな気持ちでいればいいのよ」


それに関しては私が家の中に入れたから、私にも責任はあるかな。


「……ところで、バンドは辞めたのに捨てられないのね。もう壊れてるんでしょ? あれ」


部屋の隅にあった、私達と一緒にトラックに轢かれてしまったギター。


ケースから出されることなく、ボロボロの状態で置かれているそれを花子は指差して見せた。


「あれは……まだもう少しだけ置いておきたいんだ。その時が来るまで……な」
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