桜が咲く頃に、私は
どうして壊れたままでずっと置いているんだろうと、私も不思議に思っていたけど、空と花子にしかわからないこともあるのだろう。


夢ちゃんが片付けようとしないところを見ても、きっと空にとって大切な物だったのだろうし、私が触れるべき物ではない。


「文句の一つでも言ってやろうと思って来たけど……なんか余計にわけがわからなくなったわ。でも、理由がわかっただけ良かったかな」


そう言って立ち上がった花子。


もう帰るつもりなのか、バッグも手に持っている。


「あ、もう帰るつもり? 今日さ、夢ちゃんの誕生日だから……良かったら花子もどう? 賑やかな方が喜ぶと思うし」


なぜそんなことを言ったのか、自分自身でもわからない。


空も翠も「何言ってんの?」って顔で私を見てるし、そう思うのも当然だろうけど。


「……もしかして同情してたりする? やめていただけるかしら。私は悲劇のヒロインとか嫌いなの。それに、知らない人がいても楽しくないでしょ。妹さんの誕生日くらい、知り合いだけで祝ってあげなさいよ」


呆れたように肩をすくめて玄関の方に歩いて、振り返った花子は空を見て小さく呟いた。


「じゃあね」
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