桜が咲く頃に、私は


それからしばらくして。



「ハッピーバースデー!」



夢ちゃんが学校から帰るなり、待ち構えていた私達はクラッカーを鳴らして出迎えた。


今日は誕生日……とわかっていても、私達がここまでするとは思っていなかったのだろう。


驚いて目をまん丸にして、私達を見ている。


「お、お兄ちゃん仕事は? それに早春さんも……えっと、あ、柔道部使いの人」


「柔道部使いって……私は翠。早春の親友ってやつだよ。お誕生日おめでとう」


一度学校祭で見ているとはいえ、ほぼ初対面だったかな、そう言えば。


でも翠はそんなことはお構いなしに、「本日の主役」と書かれたたすきを夢ちゃんに掛けて、鼻眼鏡や三角帽子を次々と付けて行く。


「え、ちょ、ちょっと待って。着替えさせて」


嬉しそうに笑いながら奥の部屋に入って行く夢ちゃんを見て、今は私のことは考えないでおこうと決めた。


広瀬のことで悩み始めると、夢ちゃんをお祝い出来なくなりそうだから。


少しして、私服に着替えて戻って来た夢ちゃんは、翠が付けたパーティグッズを付け直していて、意外なノリの良さも見せてくれた。


そして改めて、夢ちゃんの15歳の誕生日のパーティが始まったのだ。
< 120 / 301 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop