桜が咲く頃に、私は
それからしばらくして。
「ハッピーバースデー!」
夢ちゃんが学校から帰るなり、待ち構えていた私達はクラッカーを鳴らして出迎えた。
今日は誕生日……とわかっていても、私達がここまでするとは思っていなかったのだろう。
驚いて目をまん丸にして、私達を見ている。
「お、お兄ちゃん仕事は? それに早春さんも……えっと、あ、柔道部使いの人」
「柔道部使いって……私は翠。早春の親友ってやつだよ。お誕生日おめでとう」
一度学校祭で見ているとはいえ、ほぼ初対面だったかな、そう言えば。
でも翠はそんなことはお構いなしに、「本日の主役」と書かれたたすきを夢ちゃんに掛けて、鼻眼鏡や三角帽子を次々と付けて行く。
「え、ちょ、ちょっと待って。着替えさせて」
嬉しそうに笑いながら奥の部屋に入って行く夢ちゃんを見て、今は私のことは考えないでおこうと決めた。
広瀬のことで悩み始めると、夢ちゃんをお祝い出来なくなりそうだから。
少しして、私服に着替えて戻って来た夢ちゃんは、翠が付けたパーティグッズを付け直していて、意外なノリの良さも見せてくれた。
そして改めて、夢ちゃんの15歳の誕生日のパーティが始まったのだ。