桜が咲く頃に、私は
「見た目はともかく、超美味いんだけど! 早春が作ったとは思えないって! これも夢ちゃんに作り方を教えてもらったわけ!?」


遠慮など一切せずに、我先にと料理を食べる翠に、なぜか夢ちゃんも嬉しそうで。


「最近は毎日一緒に晩御飯作ってたもんね。まさか私が料理を振る舞われる側になるとは思わなかったけど」


ニコニコして食べる夢ちゃんを見ていると、私だけの力じゃないけど頑張って良かったと思うよ。


「毎日厳しく教えてもらったからねぇ。夢先生の指導あってだよ」


「えー! 私、そんなに厳しくなかったよね? 早春さん話盛り過ぎ!」


こんな風に、全てを忘れて笑い合うのは逃げなのかな。


家族から逃げて、広瀬から逃げて、現実から逃げてさ。


お祝いだから楽しくするのは当たり前だとして、私は明日からどうすれば良いのかな。


今、この時みたいに、また笑えることがあるかな。


楽しい時間はあっという間に過ぎ去って、ケーキも食べてお腹がいっぱいになった頃に、私と空からの誕生日プレゼントを夢ちゃんに渡す。


「あー、なんかごめん。早春が何も言わないから、プレゼント用意してなかったよ。明日にでも早春に渡しておくから。今日は許して」
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