桜が咲く頃に、私は
申し訳なさそうに手を合わせた翠に、夢ちゃんはブンブンと首を横に振った。


「そんな、悪いですよ。私の為に料理を作ってくれて、お祝いもしてくれたのに、これ以上はバチが当たります」


眩しいほどの笑顔を浮かべた夢ちゃんに、翠は何か思うことがあったのだろうか。


「んー! 可愛いやつ! 本当に天川の妹なの? 私もこんな妹がほしいよ」


そう言って夢ちゃんを抱き締めて頬擦りをしたのだ。


「そうか、プレゼントはいらないか。残念だな。せっかく買ってきたのにさ」


「お兄ちゃんは別! ありがたく頂くからね」


さすが兄弟には遠慮がない。


空も、そんな夢ちゃんの性格をわかっていたのか、笑いながらラッピングされた細長い箱を取り出した。


ジュエリーショップで買ったプレゼント。


そんな物の後に、私のプレゼントを渡すのか……順番を間違えたかもしれないな。


「ありがとうお兄ちゃん。開けてもいい?」


「いいけど……引くなよ?」


「なにそれ。私が引くような物買ったわけ?」


笑いながら包装から取り出し、箱を開けた夢ちゃんは……その瞬間真顔になった。


つまみ上げたそれは……一粒だけの真珠のネックレス。


控え目だけど上品な、可愛らしくも、美しくもあるそれは、夢ちゃんにはまだ早いと思えるものだった。
< 122 / 301 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop