桜が咲く頃に、私は
「え……ちょっと、高いんじゃないのこれ」


「いいんだよ。来年もプレゼントを渡せる保証はないんだから。もう高校生だし、これから先何にでも使えるだろ? まあ、今のお前にはお世辞にも似合うとは言えないけどさ」


少し恥ずかしそうにそう言った空の気持ちが、痛いほど私には伝わって来る。


これが最後の誕生日プレゼントだから、何年分もまとめて贈りたかったに違いない。


この先、色んな場面で使えるようにと。


「そんなこと言って、来年からプレゼントをくれないつもりでしょ。残念でした、来年も貰うからね! でも……ありがとう。大切に使うね」


少し困ったようだったけど、にっこりと微笑んで見せた夢ちゃん。


なんか、私のプレゼントのしょぼさが際立ってしまいそうで怖いよ。


「あ、夢ちゃん。私は……その……大したものじゃなくて悪いんだけど。はい」


バッグの中から取り出した箱。


「えへへ。早春さん、ありがとう」


夢ちゃんは嬉しそうにそれを受け取って、包装紙が破れないようにゆっくりと開けて行く。


そして、箱を開けて中から取り出したのは……。


「時計? 時計付きのフォトフレームだ」
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