桜が咲く頃に、私は
「え、えっとさ。夢ちゃんには今を大切に生きてほしいって言うか……私なんて泊めてもらってる身で偉そうかもだけど、皆で過ごす時間を、これからの時間を大事にしてほしいと思って」


もう、長くない今だから、これをプレゼントしようと思えたのかもしれない。


私と空が、夢ちゃんと一緒に過ごす時間は少ないから。


今、この時間を大切にしたいんだ。


「ありがとう……早春さん。嬉しいな。そんな風に想ってくれてたんだね」


照れる私を見て、翠がニヤニヤしながら肘で小突く。


「じゃ、それに飾る写真でも撮りますかね。ほら、三人並んで並んで。今日という日を思い出に残しておかなきゃね。私が撮るから、ほら!」


翠に促されて、夢ちゃんの後ろに空と、なぜか私まで並んで。


「や、やっぱり家族だけで撮った方がいいんじゃない? フォトフレームに飾る写真なら、尚更さ」


「だったら、私のお姉ちゃんみたいなものだから早春さんも一緒だね。大好きだよ、お兄ちゃんもお姉ちゃんも」


その言葉に思わず泣き出してしまいそうだったけど、グッと涙を堪えた。


けれど、なぜか私ではなく翠が泣いていて、泣き止んで写真を撮るまでに少し時間がかかってしまった。
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