桜が咲く頃に、私は


「そりゃあ多分、今尾と上野達だよ。あいつら、私を仲間に引き入れて広瀬をいじめようとしてたからさ。まあ、私は可愛いもんだよ。パシリに使うことが多かっただけだし」


屋上の前に戻り、深沢達にいじめの犯人を尋ねると、やけにあっさり答えが返って来た。


過去に広瀬をいじめていたこともあって、もしかしたら知っているかなと翠が尋ねたら、まさか知っていたとは。


「最初から言えよ! なんか早春が無駄にダメージ負ったじゃないかよ!」


「訊かれなかったから! それに、桜井と広瀬は別れたんだろ? 普通、別れた相手のことまで気にするか? お前、そんなにお節介な人間だったっけ?」


さも当然と言った様子で翠に反論する深沢。


最初から関わっていなければ、間違いなくこの問題はスルーしていたに違いない。


だけど私は……これから逃げたら、心残りになってしまうと思ったから。


「……そいつらどんなやつ?」


涙声で尋ねると、深沢も流石に心配した様子で私の横に腰を下ろして。


「もう。あんたがそんなに元気ないと張り合いがないっての! ほらほら、美味しそうな豚足だよ? 食べたいでしょ」


深沢はそう言って、私の前に自分の腕を差し出した。
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