桜が咲く頃に、私は
いじめには立ち向かってほしいと思うよ。


でも、無理だと思ったら逃げてもいい。


命の危険を感じてまで立ち向かうべきじゃないと思うし、死ぬまで自分を貫いても、誰も喜ばないと思うから。


「じゃあどうする? このままだと何も変わらないけど」


翠は困ったようにそう言うけどさ、いじめの問題って難しいんだよね。


大勢の前で冗談っぽくやるいじめは目に付きやすいけど、人知れず行われているいじめは、見ようと思って見られるものじゃないから。


本人が言うか、重大な事件が起こってからじゃないといじめ自体に気付かないことが多い……という印象がある。


「んなもん、広瀬が助けを求めてないのにどうしようもないだろ。世の中には出来ることと出来ないことがあんだよ。桜井はさっさと次の恋でも見付けろよ。広瀬に構ってても時間の無駄だと思うけど」


深沢が言うように、広瀬には多分新しい彼女がいるし、私が何をしたところで何も変わらないだろう。


ただの自己満足か、それとも未練かと捉えられてもおかしくないけど、私としてはそうじゃない。


思い残すことを作りたくない。


せっかく生き返ったんだ、無責任に放り投げて人生を終わらせることはしたくなかった。


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