桜が咲く頃に、私は
とは言え、今の私に出来ることは何もない。


広瀬に付き纏うことも出来ないし、その資格は私にはないから。


放課後になり、空の家に帰る。


あれからまた料理のバリエーションが増えて、課題だった見た目も、かなりマシに作れるようになって来た。


部屋着に着替えてエプロンを着けて、冷蔵庫の中を見る。


「今日は……何にしようかな」


材料を眺めて献立を決めて取り出し、下ごしらえをしていると夢ちゃんが帰って来る。


そして、何を作ろうとしているかを伝えて、一緒に料理するというのがいつもの流れだ。


広瀬のいじめのことは、翠達が何かあったら教えてくれると言っていたけど、別に四六時中張り付いてるわけじゃないし、飽くまでも何かあったら……という話なんだけどね。


帰って来た夢ちゃんと並んで料理をして、味見は夢ちゃんの仕事。


「どれ……ふむふむ。味に迷いが出ておる。何か悩みでもあるのかな?」


と、おかしなことを言い出す夢ちゃん。


味に伝わるほど、私が悩んでるのが出てるのかな。


「マジ? そんなのわかるの?」


「冗談だよ。お姉ちゃんは顔にすぐ出るからわかりやすいだけ。どうしたの? 何かあった?」

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