桜が咲く頃に、私は
本当、夢ちゃんには敵わないな。


いつもと同じように振舞っていたつもりでも、やっぱり翠達からの連絡を気にしているし、それが顔に出ていたのかな。


「うん。知り合いがさ、酷いいじめに遭ってるみたいでね。どうにかしてあげたいけど、どうにも出来ないっていうかさ……」


「それって……もしかしてお姉ちゃんの彼氏だったり? ほら、広瀬さんだっけ?」


「え。夢ちゃんなんでわかるの!? あ、いや、でももう彼氏じゃないんだけどさ……」


いくら何でも鋭すぎない?


良く人を見ているのか、超能力かはわからないけど、一発で当てるなんて普通出来ないと思うんだけど。


「ごめんなさい……別れちゃったんだ。どうしてそう思ったかは、翠さんはいじめられるタイプじゃなさそうだし、私が知ってるのは後は広瀬さんだけだから、知ってる名前を言っただけなんだけどね。それに……まあ、少し生傷もあったからね」


なるほど、本当に良く人を見てるな夢ちゃんは。


「じゃあ……私は夢ちゃんから見てどう映ってるわけ?」


「お姉ちゃん? うーん。優しくて、何にでも一生懸命で、とっても強いんだけど繊細でね。後は、物凄く乙女で可愛いの」


「私に関しては全然違うね。そんなの言われたことないよ」


いつからか、私のことを「お姉ちゃん」と呼ぶようになった夢ちゃんと、笑いながら話をしても、胸につかえた言いようのない不安は消えなかった。
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