桜が咲く頃に、私は
「ひ、人を散々心配させといて、今更そんなこと言わないでよ。そもそも、私なんかを好きにならなかったら……」


私がそう言うと、空は手を差し出して。


何を求めているのかはわからないけど、その手を取って私の額に当てた。


と、同時にポケットの中のスマホがブルッと震え、それを取り出した。


何かわかったら連絡してくれと言ってあったから、もしかしたらそのことかと思って。


スマホのメッセージを開くと、翠から写真が二枚。


「今尾」と「上野」と書かれたその写真は……以前私が、帰る広瀬を見ていた時に蹴飛ばしていた中の二人?


「ん? あれ……そいつら」


私よりも大きな反応を示したのは、まさかの空だった。


「何? こいつら知ってんの? 広瀬をいじめてるヤバいやつららしくてさ。走って来る車に人をぶつける遊びをやってるみたいなんだ」


「ちょっと待て、そんなの遊びじゃないだろ。下手すれば俺達みたいに……」


「うん。広瀬がどうやらこいつらにやられてるみたいでさ。だから、万が一のことになる前に、どうにかしたいんだ」


スマホを畳の上に置き、改めて空の手を、祈るように額に当てる。


空を見ると、目を細めて部屋の隅のギターを見て、小さく呟いた。
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