桜が咲く頃に、私は

「ま、待って……桜井さん、待って！ どこに行くつもりなの？」


廊下に出て、私の手を振りほどいた友紀が、顔をしかめて私に尋ねた。


「広瀬の様子を見に行く。もしも今尾と上野が関わってるなら、ぶっ殺す」


その言葉に驚いたのか、それともその後のことを考えて恐怖したのか、友紀は顔を背けて。


「や、やめてよ……そんなことしたら、今度は私までいじめのターゲットになっちゃう。琥太朗くんのことだって、ただの事故かもしれないし……」


「あんた、自分の彼氏が病院に運ばれたんだよ？ 本当のことが知りたくないわけ？ それとも、この件に今尾と上野が絡んでたら、何か不都合があるの？」


友紀に詰め寄り、睨み付けながら顔を近付けると、どうすればいいかわからないといった様子で手で顔を覆って口を開いた。


「だって！ どっちにしても、疑った時点で目を付けられるよ！ 逆らったらもっともっといじめられる！ だったら、逆らわない方がマシだよ！」


深沢が言ってたことと丸っきり同じだ。


いじめられっ子の心理か。


「じゃあもしも、あんたが明日死ぬとしたら。今尾と上野が広瀬を病院送りにしたとしたら。それでも逆らわずに泣き寝入りするの？」