桜が咲く頃に、私は
「それは……明日死ぬとしたら、その前に琥太朗くんを酷い目に合わせた人に復讐する」


これで「反撃が怖い」とか言い出したらどうしようと思ったよ。


「怖いのはわかるよ。ただ耐えるのが良いのか、強い気持ちで立ち向かうのが良いのか。それは私にはわかんないしさ。もう無理だと思ったら、死ぬ前に逃げれば良いんだ。でも、絶対に逃げちゃダメな時ってのはあるんだよ」


人の命を弄んで、平然としているのは遊びなんかじゃない。


立派な殺人未遂で犯罪だ。


許されることじゃない。


「でも……どうすればいいの? 私はどうすれば」


「何も今から復讐に行こうって言ってんじゃないよ。広瀬がどこの病院に運ばれたのかわからないなら、運ばれてそうな病院を当たるしかない。まずは話を聞く。話が出来る状態だったら……だけど」


それも含めての確認だから。


友紀はまた泣きそうになっているけど、こればかりは私もわからないから。


「うん。そうだね。私も琥太朗くんに連絡してみる。昨日から既読にならなくて……あんまり役には立たないかもしれないけど」


「よし、じゃあ行こうか。広瀬を探しにさ。移動中に連絡があるかもしれないしさ」


どうして私は、もう終わった広瀬の為にこれだけ動いているのか。


心残りになるとはいえ、諦めてしまえば考えなくても良いのに。

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