桜が咲く頃に、私は
「え、てか学校祭の時のイケメンじゃない! なんで桜井と一緒に……あ、私、深沢姫って言います。姫ちゃんでもプリンセスでも豚足ちゃんでも呼びやすいように呼んでください。テヘ」


「俺が話をつけて来るから、逃がさないように出口を見ててくれ。でも、危ないと思ったら無理はするなよ」


深沢のアピールを無視して階段を下りる空に続いて、私も駆け出す。


「おいおい、無視かよ」


深沢がガッカリしたような声を出したけど、今は構っていられない。


怖そうなお兄さんが顔を上げて空を見ると、一転して明るい顔になって。


「お、おお……久し振りじゃねーか空。バンド辞めたって聞いてたから何してんのかなって思ってたんだよ!」


意外とフレンドリーな雰囲気で、立ち上がって空の肩をポンポンと叩いた。


「シュンさん、今、中に俺のツレに手を出したガキがいるんですよ。そいつら連れ出したいんで、一瞬だけ中に入れてもらえないですか」


空がそう言うと、シュンさんと呼ばれたお兄さんは、タバコの煙を吐き出してイスに座って、手を差し出した。


「ワンドリンク付きで2500円。わかるだろ空。運営も大変なんだよ。いくらお前でも、演者として来てるわけじゃないならこれは譲れねぇ」
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