桜が咲く頃に、私は
商魂たくましいというか、公私混同をしていないというか。


この人からは、金を払わなければ断固として通さないという強い意思を感じる。


「そんなこと言ってる場合じゃ……くそっ! 1分で良いんです! いや、30秒でも!」


「1分だろうと1時間だろうと俺の答えは変わらねぇよ。このドアを通りたいなら2500円払えって言ってるだけだからな。安いもんだろ? それだけで俺は、お前のやることは何も見ねぇし聞かねぇ。口止め料と後始末代も含まれてるならよ」


このお兄さんは、意地悪で言っているわけじゃないというのがわかる。


空もあいつらはマナーが悪いと言っていたから、店側からすればそれはもっと目に付くはずだ。


口止め料……というのが、お兄さんの答えなのだろう。


「わかった。私が払う。二人分ね。すぐに出るからドリチケはいらない」


「話がわかるねお嬢ちゃん。じゃ、どうぞ。だけど中で暴れてくれるなよ? 掃除が面倒だからな」


お兄さんに笑顔で送られて、私と空は店内へと入った。


中に入るなり、ドンドンとお腹に響く重低音。


ビリビリと壁が震え、客と演者が声を上げる異様な空間。


そんな中で客を掻き分けて進むと……店の奥にあるドリンクカウンターの前に二人を見付けた。
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