桜が咲く頃に、私は
「な、なんのことだかわからねぇな! 広瀬がひき逃げされたことと、俺達は何の関係もねぇ! 人を疑ってんじゃねぇよ!」


「バカなのお前。何の関係もないのに、なんで逃げて、ナイフなんか振り回してるわけ? そんなの、自分が犯人だって言ってるようなもんだろ。それに……広瀬はひき逃げされたなんて一言も言ってなかったし、誰からも聞かなかったのに、どうしてお前が知ってるんだよ」


私がそう問い詰めると、ハッとした様子で今の自分の姿と発言に気付いたみたいだ。


「さ、さすが底辺高校……これほどのバカっているもんだね」


翠も逆に関心して、半笑いで唸る。


「う、うるせぇ! だったら何だってんだ! 軽くで良いのに、上野が力を入れすぎて派手に轢かれちまってよ、よりによって車が逃げやがるしよ! 治療費ももらえないとかふざけんなよ!」


言い分が本当に酷くて吐き気がする。


そんな事の為に、広瀬はあんな怪我をすることになったのかと考えると、怒りが私の口を突いて飛び出した。


「ふざけてんのはお前だろ! 下手すりゃ死ぬとこだったんだぞ!」


「はっ! いっそ死んでくれた方が良かったのによ! 口封じも出来たのに! 無知なお前らに教えてやるよ。日本には少年法ってのがあってな、たとえ俺が人を殺しても、死刑にはならないんだぜ」
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