桜が咲く頃に、私は
その夜。


夢ちゃんが寝るのを待って、私は空の部屋へと移動した。


「夢は寝たのか」


「うん。出来れば空にも眠っていてほしかったけど」


最近、空は眠らずに私を待っていることが多くなった。


……いや、きっとそうじゃないね。


「やっぱり眠るのが怖い?」


窓際でぼんやりと夜空を見上げる空の隣に座ると、私の肩に手を回して引き寄せる。


「怖い。こうして早春を抱き寄せられなくなるんだ。もうすぐこの世界からいなくなってしまうんだ。それは……つらい」


抱き寄せられた私は、空の首元に頭を寄せて小さく頷いた。


「そうだね。半年あったはずの私達の余命が、気付いたら三ヶ月ほどで尽きようとしてるんだね。考えると……怖いね」


空の手をギュッと握って、今の想いを口にする。


きっと私達は、元々一つの命を二つに分けたわけだから、足りない部分を感じてしまっているんだ。


だから、こうして身を寄せ合っている時は心穏やかでいられる。


「早春は、生き返って良かったと思えるか? 後悔はしてないか? 俺達は二回死ぬことになるけど……嫌じゃないか?」


一度目の死は、自分が死んだことすら気付かなかったから、何も考える余裕がなかった。


だけど生き返ってからは、毎日死を考えさせられる。
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