桜が咲く頃に、私は
数字が減る度、私達は死に向かっているんだと、昔の私のままなら、口では生きる意味がわからないとか言いながら、もしかしたら発狂していたかもしれない。


「空は……夢ちゃんの為に生き返ったんでしょ。一人になる夢ちゃんがこれから先、生きていけるように。私にはそんなのなかったから、ちょっと羨ましかったよ。こうして空を好きになったし、後悔なんてしてない。そりゃあ死ぬのは嫌だけど……生き返らなかったらきっと私達、あの長い階段でずっと喧嘩してたよ」


「そう……だよな。生き返ったから、早春との約束を果たせたんだ。生きてるから、こうして早春の温もりを感じるんだな」


いつの間にか、空に包み込まれるように背後から抱き締められている。


私の肩に顔を寄せて、深呼吸しているのがわかる。


「早春の匂いは落ち着く」


「似た兄妹だなぁ。夢ちゃんも私の匂い嗅ぐのが好きみたいだし」


私達はいつもこんな話をしているけど、普通の恋人だったら、きっと将来の話とかもしているのかな。


こんな性格の私には似合わないけど、何年後に結婚しようとか言ったりしてさ。


そういう話は……もうすぐ死んでしまう私達には出来ないことだから羨ましく思えるよ。
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