桜が咲く頃に、私は
「夢さ、誕生日の時の写真が気に入ってるみたいで、早春がプレゼントしたフォトフレームに入れてるんだな。案外可愛いとこあるよあいつも」


「何言ってんの。夢ちゃんはいつも可愛いし良い子だよ? もしかして知らなかった?」


「本当かよ。そう言えば、今日が後5分で終わるけど……もしかして知らなかった?」


壁に架かってる時計に目を向けると、いつの間にか次の日になろうとしてた。


結局、今日も空は眠ってくれなかった。


今の私達だと、二人とも数字が減ってしまうから嫌なんだけど……死ぬよりはマシだと思うしかないんだよね。


後ろから抱く空の腕を解いて、その場で回転して空と向かい合った。


「いつの間にか、作業のキスが作業じゃなくなっちゃったね」


「そうだな。でも俺は、随分前から作業とは思ってなかったけど」


「そのせいで余命が短くなったんだよ? わかってる?」


「命を投げ出さなければ早春を愛せないなら、俺はいくらでも投げ出すよ」


そして、私と空の顔が近付いた。


死ぬのは確かに怖い。


だけど、愛し合うことでその恐怖が少しでも紛れるなら。


この時には、死の恐怖を誤魔化さなければ、私達は眠れなくなっていたんだ。


たとえ強がりだとしても。


空「22」、私「41」。
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