桜が咲く頃に、私は
「え?」


ボソッと夢ちゃんが呟いたその問いに、思わず声が漏れてしまった。


「あ、いや、お姉ちゃんが嫌だとかそういうんじゃないの。ただ、そんなに長い間家を出て、両親は心配してないのかなって。うちみたいにいつ、いなくなるかわからないんだし、会える時に会った方がいいんじゃないかなって」


両親がいない夢ちゃんは、家出少女の私の、そんな心配までしてくれてるんだね。


でも、うちは違うんだ。


「ありがとね夢ちゃん。本当に可愛いんだから」


私はそう言って夢ちゃんを抱き締めて、頭を撫でた。


うちは……どっちの親も、私がいると邪魔なんだよ。


新しい生活をするのに、反抗的な私を引き取りたいと言ってくれなくて、お母さんの家にも、お父さんの家にも居場所はない。


だから、帰る必要なんてないんだ。


少しして、深沢がその豊満なお肉を揺らしながらやって来た。


「お待たせ! お、この子が空さんの妹?」


「あ、一人だけ派手な服着てた人……」


「学校祭の時に空さんと来てた子だ! なんだ、初対面じゃないんだね!」


あの失態を見られているのに、普通に接することが出来る深沢の精神力は凄いものがあるな。
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