桜が咲く頃に、私は
一応飾り付けが終わり、料理を手伝う。


相変わらず夢ちゃんは手際が良くて、隣に立つ翠はただただ驚いてばかり。


私と深沢は、テーブルで料理の下拵え。


最初は和気あいあいとやっていたけど、夕方になると一気に料理が仕上がり始めて大慌て。


でもその甲斐あって、空が帰る前になんとかセッティングまで終わらせることが出来た。







「ただいま。あれ? 誰か来てるのか?」


空が仕事から帰って来て、玄関の靴を見たのだろう。


キッチンを抜けて、奥の部屋のふすまを開けたと同時に、私達は空に向けてクラッカーを鳴らした。


「メリークリスマス……イーヴ!」


雨戸を閉め、真っ暗な部屋でギラギラと部屋を照らす色とりどりの照明。


「……クラブかここは。ま、変にうるさい音楽が流れてなくて良かったけど」


「え!? 今から私のお気に入りのエレクトロを流そうと思ったんだけど……ダメなの!?」


深沢がスマホを操作していたけど、空に言われて動きが止まった。


「お願いやめて」


LEDライトと音楽は却下され、普通に蛍光灯の下でパーティをすることになった。


これに関してはサプライズではなく、ただのパーティ。


私と空にとっては、最後のクリスマスパーティ。


それがわかっていたからか、空は文句のひとつも言わずに私達と楽しんでいた。


余命も……少し減った。
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