桜が咲く頃に、私は
「は? デート? なんだよ急に」


「そ。明日は空の誕生日なんでしょ? 夢ちゃんから教えてもらって知ったんだから。クリスマスの誕生日に、彼女とデート。良いでしょ?」


私の手を握ったまま、少し考えている様子。


でも、すぐにクスッと笑って。


「わかったよ。でも、プレゼントとかいらないからな? 今更何かもらったところで、すぐに死んでしまうから」


「思い出を作ろうよ。最後の誕生日に、一緒にいたのは大好きな彼女だったんだって」


私がそう言って空の背中に頬を寄せると、空は私の腕を解いて。


身体を回転させると、私を抱き寄せて突然のキス。


長く、10秒以上は余裕で超えているほど長く。


お互いの命が削られる、文字通り命懸けのキスだ。


「今日は……早春と一緒に寝る」


「夢ちゃんが起きたら驚くよ? それに、変なことはするなって言われてるし」


「夢だって早春と一緒に寝てるんだから、寝るくらい別にいいだろ」


「空って……意外と甘えん坊だったりして」


なんて話をしながら、私と空は同じ布団に潜り込んだ。


背後から抱き締められたまま、空の誕生日を迎える。


「ハッピーバースデー」


私はそう呟いて、空の手を握って目を閉じた。


空「17」、私「35」。
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