桜が咲く頃に、私は
ファミレスを出て、私と空は、両親の墓があるという隣の県まで電車で行くことになった。


思っていたより遠くて、ちょっとした小旅行気分。


目的がお墓参りでも、こうして車窓の景色を眺めたり、二人で話したりしながら移動出来るのは楽しいし、非日常を味わえる。


電車移動だけでも一時間かかり、近くの花屋でお花を買って、空と夢ちゃんの両親が眠っているというお寺に。


お墓は少ないけれど、手入れがされていて綺麗な墓地。


その中にある「天川家之墓」と掘られたお墓の前に来ると、空は手を合わせた。


私も見よう見まねで、同じように手を合わせる。


「……父さん母さん、あまり来られなくてごめん。今日は、紹介したい人がいて連れて来たんだ」


話し始めた空が、チラリと私の方を見て微笑む。


「桜井早春。がさつなところが母さんに似ててさ。でも優しくて、俺の大切な人なんだ」


こういう時、なんて言えば良いかわからないよ。


生きている両親に会うのも緊張するだろうけど、お墓参りは勝手がわからない。


「俺も早春も、もうすぐそっちに行くからさ、いじめないでやってくれよ」


そう呟くと、スーッと大きく深呼吸をして、どこか晴れやかな表情になっていた。
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