桜が咲く頃に、私は
会いたくない……けど、今日会わなければ会えない……か。


15歳の誕生日の前、両親が離婚するという話をお母さんに聞かされて、お父さんが出ていったのを今でも覚えている。


詳しい話はしてくれなかったけど、お父さんが他所に女を作ったとかどうとかで。


だから、お母さんも離婚後は遠慮なく男を家に連れ込むようになって、私は家を飛び出したんだ。


電車に乗り、お父さんの実家に向かいながら、私の選択は本当にこれで正しかったのかと不安になっていた。


「ねぇ空。これって本当に正しい選択なのかな。もしかしたら私は邪魔で、会ってもらえないかもしれないのに、何も言わずにいきなり行くなんてさ。これだけじゃなくて、私が今までしてきた選択が正しかったのかわからないよ」


電車の中、隣に座る空にもたれ掛かり、不安で押し潰されそうになる心を何とか保って。


「俺だってそんなの自信なんて持てないさ。人が見れば、俺と早春が付き合うこと自体が間違ってるって言うかもしれないだろ?」


実際、翠はその意見寄りだと思うよ。


だけど私も、きっと空も間違ってるとは思わないわけで。


「だから俺は、迷った時は心に従う。早春を愛してるから、どんな選択でも後悔はない。もしも迷ったら、早春はどの選択が『優しいか』で決めればいい。早春なら、きっとそれを選べる」
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